潰瘍性大腸炎とは
潰瘍性大腸炎は難病です。
しっかりとした治療をしないと、日常生活が送れないほどの強い症状に進展することで大腸を摘出したり人工肛門を作らなければいけなくなったり、大腸癌を発症したりしてしまう怖い病気です。
プラーカ中村クリニックには消化器内科専門医、消化器内視鏡専門医が複数在籍しており、検査から治療までを専門的に行っています。
潰瘍性大腸炎とは、自己免疫疾患の一種です。
自己免疫性疾患とは、免疫が混乱することで自分の臓器を攻撃してしまう病気です。
遺伝因子、環境因子が関与しますが、なぜ起こるのかは未解明です。
自己免疫疾患は多数あり、肝臓を攻撃する自己免疫性肝炎、関節を攻撃する関節リウマチ、などが代表です。
潰瘍性大腸炎の患者数はどんどん増えていて、ここ10年で2倍弱になっています。性差はなく、若い年齢での発症が多いことも特徴ですが、高齢発症もあります。
潰瘍性大腸炎3つのタイプ
潰瘍性大腸炎は、典型的には直腸から連続性に広がっていきますが、どこまで広がっているかにより3つのタイプに分かれます。
① 直腸のみ(直腸炎型)
② 左半分まで広がる(左側大腸炎型)
③ 全体に広がる(全大腸炎型)

潰瘍性大腸炎の症状
下痢、血便、腹痛が三大症状です。
大腸が免疫に攻撃され赤くなり粘膜がはがれる(潰瘍になる)ことで、症状が起こります。
潰瘍性大腸炎由来の癌
また、長期間炎症が起こった粘膜では、遺伝子異常から大腸癌が発生しやすくなります。
潰瘍性大腸炎から起こる大腸癌は、一般的な大腸癌より見つけにくく、悪性度が高いことが知られており危険です。
このため、定期的な大腸検査がガイドラインでも推奨されています。

腸管外合併症もあります。
大腸以外にも
皮膚: 壊疽性膿皮症、結節性紅斑
眼、口: 眼病変(ブドウ膜炎など)、口内炎
骨: 関節痛または関節炎、強直性脊椎炎、骨粗しょう症
などの症状が起こることが20-50%で起こります。
潰瘍性大腸炎の経過
経過により、いくつかのタイプに分かれます。
再燃寛解型(Relapsing-Remitting Type)
・最も一般的なタイプ
・症状が良くなる「寛解」と悪化する「再燃」を繰り返す
慢性持続型(Chronic Continuous Type)
・常に症状が続き、寛解期がほとんどない
・治療が難しく、強力な薬物療法や手術が必要になることもある
急性劇症型(Fulminant Type)
・急激に症状が悪化し、重篤な状態になる
・大量の下血や発熱、腹痛があり、入院や手術が必要になることが多い
初回発作型(First Attack Type)
・初めての発症後に完全に寛解し、その後再燃しないタイプ

潰瘍性大腸炎の検査
潰瘍性大腸炎では、診断の為だけでなく、病勢の確認や発癌の除外に、定期的な検査が必要です。
血液検査
炎症の程度や栄養状態、貧血の有無を確認します。
便検査
診断時に感染性腸炎との区別の為に培養検査も提出します。
また、経過観察中に、便中に血液が混ざっているか調べることで潰瘍性大腸炎が悪化しているかを予測できます。
調べる内容:
潜血反応: 便に血が混じっているかを確認します。
カロプロテクチン: 炎症性腸疾患(IBD)のマーカーとして、便中の炎症を反映します。
細菌検査: 腸の感染症(例: サルモネラ菌、カンピロバクター菌など)を除外します。
内視鏡検査(大腸カメラ)
大腸の内部を直接観察し、炎症や潰瘍の有無を確認します。
潰瘍性大腸炎の診断に欠かせない重要な検査です。
潰瘍性大腸炎の治療
寛解導入と寛解維持について
治療の目標は寛解導入(症状を治す)と、それに引き続く寛解維持(症状が出ないように維持する)です。
治療を中断してしまい維持治療をしないでいると、大腸癌の発症や、再燃、重症度が高くなるリスクにさらされ、結局は身体的・金銭的負担が高くなってしまいます。
例えば、手術で全大腸摘出まで行わなくてはいけなくなり人工肛門の造設を余儀なくされたり、高額な薬を使わないと症状がコントロールできなくなることがあります。
薬の種類
大きく分けて、“免疫を落とさない薬”と、“免疫抑制薬”に分けられます。
免疫を落とせば当然体に負担があるので、免疫を落とさない5ASA製剤が治療の基本となり、5ASAのみで寛解導入と維持ができたなばら最高の経過といえます。
5ASA製剤(免疫を落とさない)
飲み薬 | ペンタサ、アサコール、リアルダ、サラゾピリン |
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おしりから入れる薬(坐薬、注腸) | ペンタサ |
免疫抑制薬
5ASA製剤で寛解導入・維持ができない場合に選択されます。
飲み薬 | プレドニン、コレチメント、アザチオプリン、カログラ、リンヴォックなど |
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おしりから入れる薬(坐薬、注腸) | レクタブル、リンデロン坐薬 |
注射薬 | レミケード、エンタイビオ、ステラーラなど |
薬の注意点
なるべく体に負担がない薬、高額でない薬の使用にとどめるために
症状が治まっているからと言って、治療を中断してはいけません。
また、飲み忘れなども再燃の危険を非常に高めます。

潰瘍性大腸炎の公的補助
潰瘍性大腸炎は指定難病です。
難病手帳を申請すれば、2割負担になったり、支払い上限が固定されるので金銭的負担を軽減できます。
詳しくは、「潰瘍性大腸炎患者さんへの医療費助成制度」のキーワードで各自治体のHPなどを検索してください。
よくある質問
遺伝子以外にも様々な要因が絡み合って発症する為、遺伝の心配はいりません。ただし、家族に患者さんがいる場合は、通常よりは発症リスクが高まります。
潰瘍性大腸炎の原因は不明で、現時点で潰瘍性大腸炎の症状を抑える治療はあっても、潰瘍性大腸炎自体を治す治療法はありません。そのため、症状が落ち着いた状態を維持する為に、継続的な維持治療が必要です。
症状が強い場合は、消化に良いもの、脂分などが少ないもの等が勧められます。刺激物もよくないでしょう。症状が落ち着いていれば、食事制限は必要ありません。むしろ、制限してストレスを感じて悪化する場合もあるくらいです。お酒やたばこの節制についても、ストレスを感じないようにするのが一番大事です。
症状がある状況の潰瘍性大腸炎では、不妊率や早産・流産のリスクが高くなります。また、ほとんどの治療薬は問題ありませんが、ものによっては赤ちゃんに影響があるものがあるので、妊娠を希望している、治療中に妊娠した、などがあれば教えてください。
潰瘍性大腸炎の炎症は、癌が発生する原因になります。そのため、しっかりとした病勢コントロールが重要です。病気の範囲が広かったり、発症から長く経過しているほどリスクは高まります。潰瘍性大腸炎による大腸癌は見つけにくく、早期発見が重要なことから、発症から8年経過したらなるべく頻回に大腸カメラをした方が良いと考えます。